ハイエース コミューター!乗車定員変更、構造変更登録。14人乗りから10人乗りへ・2ナンバーから3ナンバーへ

 構造変更についての記事をご覧になられたお客様からお問い合わせを頂く事が増え、心から嬉しく思うと共に、ハイエースの持つポテンシャル並みに、門真の整備士のモチベーションもアップして参りました!

 先日も「14人乗りのハイエースを10人乗りに構造変更したい」とのお問い合わせを頂きました。

 「14人乗りのハイエース」という事は、コミューターという事になります。ここでハイエースのおさらいです。

車 種 名主な用途定員免許ナンバープレート 分類番号
ハイエースバン
(レジアスエース)
貨物最大9人普通免許4ナンバー 1ナンバー
ハイエースワゴン乗用10人乗り普通免許3ナンバー
ハイエースコミューター送迎14人乗り中型免許(8t限定解除) または大型免許2ナンバー

 コミューターとは普通乗合自動車の事を指し、一般的には送迎に適したマイクロバスの事を言います。ディーゼルエンジンタイプなら低燃費で経済的な面も人気の理由で、スクールバスやイベントの送迎、空港送迎、法事、遠足等で大活躍の車両です。

 乗車定員が11名以上になる為、2ナンバーになり、運転するには「中型免許(8t限定解除)」か「大型免許」が必要になります。普通免許では、コミューターを運転する事は出来ません

 お客様のお話を伺ったところ、14人も乗車する事が無いので、最後部の座席を4シート取り外し、その分大きな荷物等も積み込める様にしたいとの事でした。

 10人乗りになれば3ナンバーの乗用車になりますので、普通免許で運転する事が可能になります。構造変更する事でドライバーを確保する事が容易になる上、業務の幅も格段に向上します。構造変更する事でお客様のメリットに繫がるという事でしたので、今回門真の整備士が取り掛かると共に、その経緯について起筆したいと思います。

 ハイエースの定員変更は座席を取り外せばよいという単純な話では無く、安全基準を満たす為の作業も必要になります。

 様々な規定が設けられており、法律に定められた書類申請が義務付けされています。構造変更の大変な一面であり、手間も時間もかかるのが構造変更ですので、今後「ハイエースの定員変更」を検討されている方の参考になれば幸いです。

●14人乗りから10人乗りへ

お預かりした14人乗りコミューター(2ナンバー)

まずは後部座席のシートを減らすと共に荷室を確保します。  最後部の4シートを撤去して10人乗りに変更。イメージはこんな感じです。

門真の整備士により、作業は難なく終了!

最後部4シートを外したことで、荷物を載せられるスペース(荷室)が確保できています。

次は構造変更の手続きについて起筆したいと思います。

●安全基準を満たす為の作業(申請にはパーツリストが必要)

 「2ナンバーのコミューターを構造変更して3ナンバーにする」という事は、貨物車両から乗用車両になるという事です。定員の保護の観点から、乗用車両としての安全を満たさなければなりません。この車が安全である事の証の為には、構造変更に関する作業は決して手を抜く事が出来ません。

【乗用自動車の安全基準の内容】 

①排ガス測定の技術基準 「保安基準第31条」

②衝撃吸収式かじ取装置の技術基準 「保安基準第11条第2項」

③施錠装置の技術基準 「保安基準第11条の2第2項関係」

④乗用車の制動装置の技術基準 「保安基準第12条第2項関係」

⑤アンチロックブレーキシステムの技術基準「保安基準第12条第1項」

⑥衝突時における燃料漏れ防止の技術基準 「保安基準第15条関係」

⑦前面衝突の乗員保護の技術基準 「保安基準第18条第2項関係」

⑧側面衝突時の乗員保護の技術基準 「保安基準第18条第3項関係」

⑨内装材料の難燃性の技術基準 「保安基準第20条第4項関係」

⑩インストルメントパネルの衝撃吸収の技術基準 「保安基準第20条第5項関係」

⑪座席及び座席取付装置の技術基準 「保安基準第20条第6項関係」

⑫シートバック後面の衝撃吸収の技術基準 「保安基準第22条第7項関係」

⑬頭部後傾抑止装置の技術基準 「保安基準第22条第4項関係」

⑭座席ベルト取付装置の技術基準 「保安基準第22条の3第2項関係」

⑮運転者席の座席ベルトの非装着時警報装置の技術基準 「保安基準第22条の3第4項関係」

⑯外装の技術基準等 「保安基準第18条第1項第3号関係」

 では、実際の作業についてですが、構造変更に伴う改造は、改造出来るパーツが決まっています。

車体廻りエアスポイラー、デフレクター、ルーフラック、フォグライト、エアダム、フードスクープ、エアロパーツ類、フェンダーカバー類、フェンダーカバー、ロールバー等
エンジン(排気系)エキゾーストパイプ、マフラーカッター等
室内ナビゲーション、オーディオ、空気清浄機、無線機等
操縦(操作)装置パワーステアリング、シフトノブ、変速レバー等
緩衝装置コイルスプリング、ショックアブソーバー、ストラット類等
騒音防止装置マフラー、排気管
その他灯火類、ミラー、身体障碍者用操作装置等

 上記は改造が認められている指定部品の一例ですが、認められているパーツ以外の改造は違法となります。

 また、認められた指定部品は原則交換可能ですが、保安基準に適合していなければなりません。適合していない場合は車検には通りません。

 コミューター(2ナンバー)を乗用(3ナンバー)に構造変更する場合、具体的には上記の【乗用自動車の安全基準の内容】を満たす必要があります。複雑な事に、ハイエース・コミューターの場合、製造されたタイミングで基準が異なります。

 シートベルトに関しては、2010(平成22)年以前の車両は、運転席後方の側面座席に3点式シートベルトが必要になり、それに伴なってアンカーの取付けも必要になります。また、2020(令和2)年以降の車両に関しては、座席ベルト非装着時警報装置(シートベルトリマインダー)が前列席(運転席と助手席)に必要です。通常のコミューターの助手席には装着されていませんが、オプションでチョイスされていて装備されている事もありますので、要チェックです。

●構造変更の手続き「構造等変更検査」

 構造等変更検査の手続きには「書類審査」「実車検査」があります。必要書類を事前に準備して運輸支局に提出します。書類審査に合格したら、車を車検場に持ち込み「実車検査」を受けます。

①事前書類審査(構造等変更の手続きに必要な書類の準備)

 令和元年10月1日から、「用途等の変更をする使用過程車等の事前書面審査」が開始されました。必要な書類は以下の通りですが、実施する構造変更によって準備する書類が異なりますので、十分に確認した上で進めましょう。

新規検査、予備検査又は構造等変更検査を受検する自動車のうち、用途・乗車定員・車両総重量・自動車の種別を変更することにより適用される基準が変わるものについては、当該基準への適合性審査を適正かつ効率的に実施し現車審査時間の短縮が図れるよう、新規検査等に先立って、当該自動車の構造・装置の変更内容などを記載した新規検査等届出書を提出いただき、受理した届出書の事前書面審査が受検日の前日までに終了したものに限り現車審査を実施することになりました。
■新規検査等届出書とは
新規検査等届出書は道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)第36条、第37条の2、第37条の2の2、第38条及び第42条に基づく書面になります。
提出書面に虚偽があった場合には、同施行規則同条の違反となり道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第110条に基づき罰則を課すことになります。
 
■新規検査等届出書の内容
当該自動車の構造・装置の変更内容に関する書面及び保安基準の適合性に関する書面などが必要です。
○新規検査等届出書(第1号様式)
○自動車検査証、自動車予備検査証、登録識別情報等
 通知書又は自動車検査証返納証明書の写し
○諸元表又は車両諸元要目表
○外観の形状及び寸法(長さ、幅及び高さ)が明確に確認できる外観図又は写真
○重量分布計算、最大安定傾斜角度及び最小回転半径に関する書面
○騒音規制の適合性に関する書面
○排出ガス規制の適合性に関する書面
○保安基準各条項の技術的要件の適合性に関する書面
○その他必要な書面

対象となる車両は以下の通りです。

※1:対象となる自動車(二輪自動車、側者月二輪自動車及び大型特殊自動車は対象外)
 ① 使用の過程にある自動車(登録抹消中の自動車を含む)
 ② 自動車予備検査証の交付を受けた自動車
 
※2:対象となる変更内容(乗用自動車・貨物自動車には、派生した特種自動車を含む)
 ① 用途・乗車定員・車両総重量の組み合わせについて、次の区分を移行するもの
 ア 乗車定員9人以下の乗用自動車
 イ 乗車定員10人以上かつ車両総重量が5.0トン以下の乗用自動車
 ウ 乗車定員10人以上かつ車両総重量が5.0トンを超える乗用自動車
 エ 車両総重量が3.5トン以下の貨物自動車
 オ 車両総重量が3.5トンを超え12.0トン以下の貨物自動車
 カ 車両総重量が12.0トンを超える貨物自動車
 
 ② 乗車定員について、次の区分を移行するもの
 ア 11人以上の自動車
 イ 10人の自動車
 
 ③ 自動車の種別について、次の区分を移行するもの
 ア 普通自動車
 イ 小型自動車
 ウ 軽自動車
 
(普通乗用から小型乗用に変更するもの、小型乗用から普 通乗用に変更するもの、小型貨物から普通貨物に変更するものは対象外)

独立行政法人自動車技術総合機構

https://www.paradise-mall.co.jp/yamasei/oshirase/H31/0108tutatu_jizensinsa.pdf

【必要な書類】

 ・新規検査等届出書(第1号様式) 

 ・自動車検査証 

 ・自動車損害賠償責任保険(共済)証明書

 ・点検整備記録簿

 ・自動車検査票

 ・自動車税納税証明書

  ※登録自動車は原則不要。

  ※地方税のシステムに反映されるまで相応の日数を要する場合があり、確認できない場合は、従来通

   り証明書の提示が必要になります。

 ・自動車重量税納付書

  ※重量税印紙を貼付、キャッシュレス決済の場合は不要。

 ・使用者の委任状(認印押印)

  - 委任事項(自動車検査証記入・構造等変更検査)

 ・所有者の委任状

  - 構造等変更検査に伴い、型式、車台番号又は原動機の型式を変更する場合

  -  委任事項(変更登録)

 ・手数料納付書

  ※自動車検査登録印紙を貼付、キャッシュレスの場合はその旨記載。

 ・申請書(2号様式)

上記の書類にプラスして、構造変更には何種類もの添付資料が必要になります。

必用な書類一覧を見ただけでも、唸りたくなる程あります!かなり膨大ですので、参考として一部を画像でご覧ください。

○外観の形状及び寸法が明確に確認出来る外観ず又は写真

○重量分布計算、最大安定傾斜角度及び最小回転半径に関する書面

○諸元表または車両諸元要目表

○騒音規制の適合性に関する書面

 今回は該当しないので不要

○排出ガス規制の適合性に関する書面

 今回は該当しないので不要

○保安基準各条項の技術的要件の適合性に関する書面

〇その他の資料

 ・強度証明書

 ・パーツリスト(パーツの車検対応証明書等を用意しておくとスムーズに進める事が出来ます。)

 ・公認書類

②実車検査

 事前書類審査に合格したら(合格の場合は「書類審査決裁終了」の連絡がある)「改造自動車審査結果通知書」が交付されますが、通知書が届く迄1週間~10日程度かかりますので、しっかりと計画を立てた上で、余裕を持って取り組むのが良いかと思われます。

 今回のお客様は堺市にお住まいですので、書類の提出先は、「自動車技術総合機構 近畿検査部和泉事務所」になります。

https://goo.gl/maps/pXNDHAxCUfdMDnyB9

大阪運輸支局 「アクセス」

https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/osaka/

なお、事前書面審査を受ける条件に該当しない場合は、実車検査と同時に書類検査を受ける事が可能です。

平成7年11月22日から、軽微な変更については、構造等変更に係わる諸手続きを簡素化する事になりましたが、今回の構造変更は、車両の用途を変更しますので、「構造等変更検査」を受ける必要があり、「事前書類審査」が必要になります。

【自動車検査登録 総合ポータルサイト】 https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/inspect/structural-change/index.html

○ 定員変更のパターン

事前審査が必要2ナンバー ⇒ 3ナンバー
4ナンバー ⇒ 3ナンバー
事前審査が不要3ナンバー ⇒ 8ナンバー
1ナンバー ⇒ 8ナンバー
4ナンバー ⇒ 1ナンバー

次の画像は、実際に車を車検場へ持ち込んで実車検査を受ける様子です。

 

まずは

 検査用印紙を購入→手数料納付書に貼り付けます。

 ↓

 重量税は整備振興会で納付→重量税納付書に印紙を貼り付ける。

 ↓

 検査に必要な書類を運輸支局庁舎の窓口に提出(内容の確認をしてもらう)。

 ↓

 予約の確認を行い、提出した書類を全て受け取ってから検査ラインへ。  

 ただいま順番待ち!検査迄もうすぐです。

いよいよ検査場の中へ!

無事に終了!

検査に合格しましたので、重量税納付・変更登録申請・旧ナンバープレートの返却をしました。

検査に合格すると、新たな車検証に「改」の文字が追加され、構造変更は完了です。新しいナンバープレートを装着・標章ステッカーを貼り換え、任意保険の契約先に新しいナンバーを連絡して、ETCの再セットアップをして終了です。さぁ!帰りましょう!

【ここまでの流れ】

●まとめ

 ここまで記載してきた通り、構造変更には膨大な作業と時間を要します。何より技術的な条件を満たすにはプロ(整備士)で無ければ容易ではありません。今回のお客様も当初はご自身で事前書面審査を受けようと、自動車技術総合機構に相談しに行かれたそうです。

 ところが、説明が進むにつれ、あまりに複雑で難しいと感じ、結果的に弊社にご連絡を下さり構造変更をお任せ頂く事になりました。

 書類の不備や不足、車体自身が構造要件を満たしていない、パーツの強度が証明されていない等、条件をクリア出来ていなければ、何度でも出直す事になります。乗員の安全の観点から、それ程に車の構造変更には時間と労力を要します。

 弊社はこれ迄に何台もの構造変更を手掛けて参りました。お客様が希望されている、またはイメージされているお車のプランをお聞かせ下さい。書類の準備から陸運局での手続きまで、お客様に代わって手続きを行い、お客様がイメージされているお車をその手にお届け致します。

〒571-0044
大阪府門真市松生町6-21

有限会社東伸自動車
(担当:熊野・吉村まで)

電話:06-6916-3121