【修理事例】スズキ ワゴンRのエアコンが冷えない!大阪門真の整備士が解決!
お客様からお預かりした、スズキのワゴンR。「エアコンが効かない(冷えない)」との事。この時期(8月)エアコンが効かないとなると、停車中の車の中は灼熱地獄です。「スイッチを入れても冷たい風が出ない」と聞いて、まず最初に考え浮かぶ原因は「エアコンガス(冷媒)が少ない」ですが、今回のワゴンRは如何に!原因を見つけるべく門真の整備士が取り組みましたので、その内容をお届けしたいと思います。
●ワゴンRのエアコンについて
まず、お預かりしたワゴンRのエアコンについて再確認したいと思います。
・エアコンガス(冷媒)は、HFC-134a(R134a)になります。
HFC-134aは圧力が高い状態では液体ですが、圧力が低くなると気体になる性質があります。カーエ
アコンにも持ってこいの性質です。尚且つ、オゾン層を破壊せず(環境に優しく)毒性・腐食性が無
い為、冷媒配管を傷める事もありません。
・ガスの容量は320g±30g
・エアコン各部の油切れを防ぐ為に、月に一回程度はエアコンを作動させてエアコンガスを循環させる
必要がある。
・エアコンフィルターの交換目安
カーエアコンを快適に使用する為には、エアコンフィルターの定期的な清掃・交換が欠かせません。
地域 | 掃除時期の目安 | 交換時期の目安 |
寒冷地 粉塵の多い地域 | 5000㎞毎 または6ヶ月毎 | 車検毎 |
上記以外の地域 | 10000㎞ または12か月毎 | 車検毎 |
●ワゴンRのエアコンの状態
まずはお車を拝見!A/Cスイッチと内気循環スイッチをONにした状態で、数分待ちます。
吹き出し口に温度計を挿し込んでみると、温度は32℃まで上がります。全く冷えている様子がありません。計測したのは7月初旬なので、外気温とほぼ同じ温度になります。
●エアコンが冷えない時の考えられる原因
以外とあるのが、「A/Cスイッチの押し忘れ」です。点いてると思ってた…という単純なものですが、今回のワゴンRにはこれは該当しません。次に考えられるのが、エアコンガスの漏れです。どこからか漏れ続ける為、ガスをチャージすると最初は冷えますがすぐに冷えなくなってしまいます。ガス漏れは、どの様な抜け方をしているか、圧力はどうか、また経年によるものか等を総合的に判断する必要があります。
他には、コンプレッサー等の動作不良も考えられます。エアコンには、冷媒を圧縮するコンプレッサーにはじまり、コンデンサー・エバポレーター等たくさんの部品で成り立っています。これらの冷媒回路のいずれかに異常があると、冷えなくなります。
●圧力はどうか?
先程も少し触れましたが、冷媒回路に異常があると、ガス圧がおかしくなります。ガスが漏れている場合も然りです。ですので、ガス圧を測る事で原因の見通しを立てる事が可能です。
使用するのは、「マニホールドゲージ」です。エアコン整備には欠かせません。
適正圧力(目安)の計算は、
高圧 → 外気温度×1/20Mpa
低圧 → 高圧圧力の約15%前後(13~16%)
になります。外気温が高い時、アイドリング状態が長い時は、コンデンサー周辺の温度が上昇して、圧力が高めになります。
今回は、外気温が約32℃だったので、
高圧=32℃×1/20=1.6Mpa
低圧=1.6Mpa×15%=0.24Mpa(0.208~0.256Mpa)
が圧力の目安になります。あくまで目安です。条件(外気温、エンジン回転数、ACサイクル等)によって差異が生じます。
外気温と圧力の関係
外気温(℃) | 20℃ | 25℃ | 30℃ | 35℃ | 40℃ |
高圧(Mpa) | 1.0~1.4 | 1.3~1.7 | 1.6~2.1 | 1.9~2.4 | 2.3~2.8 |
低圧(Mpa) | 0.09~0.18 | 0.11~0.22 | 0.15~0.25 | 0.17~0.28 | 0.21~0.34 |
上図はHFC134aの場合
これに対し、ワゴンRに接続したマニホールドゲージの針は、高圧側が0.8Mpa、低圧側0.16Mpaなので、低圧高圧共に低い状態になります。
●診断
マニホールドゲージを使用してガス圧を測定した結果、
高圧側 0.8Mpa
低圧側 0.16Mpa
このガス圧の状態と吹き出し口からの風が冷えていないという状況から考えられる診断結果は、
ガス漏れ等でエアコンガス(冷媒)の量が不足している可能性がある。
対策としては、ガス漏れ点検とガスチャージになります。
●処置 Dr.Leak登場!
Dr.Leakhは漏れ止め剤ですが、他に蛍光剤とオイルが入っています。小さな漏れであれば内部に油膜を作り、漏れを修復してくれます。また、冷媒ガスが漏れるとオイルも一緒に漏れ出てしまうのですが、Dr.Leakはオイル(PAGオイル)も一緒に補充してくれますので、心尽くしの1本です。
エアコンオイルは潤滑の他に、密閉や防錆と言った役割があるのでとても大切で、エアコンガスを補充する時はオイルも一緒に補充します。エアコンガスと一緒で多ければ良いというものでも無く、システム内のオイルが7%より多くなると「冷えなくなる」という現象が起こります。その点、Dr.Leakはバランスよく配合されています。
それでは実際にDr.Leakを注入していきます。
エンジンをかけ、エアコンの設定温度を最低に、風量を最大にします。
よく振ったDr.Leakを注入後、エアコンガス(冷媒)も注入します。Dr.Leakにもエアコンガスが30g含まれている為、実際のガス量は30g差し引いた290gを注入します。
ガスを注入後、もう一度、ガス圧を測定します。
高圧側が1.85Mpaまで上がりました。適正圧力内です。
20~30分エアコンを稼働させてから、もう一度温度を測定してみると…。
16℃!温度が下がってきました!
さぁ次はいよいよ漏れのチェックです。万が一、Dr.LEAKを使用して外部から見える部分(確認できる部分)に漏れが確認できない、漏れた形跡がわからないとなると、室内ユニットからの冷媒ガス漏れが疑われます。
●配管の漏れチェック
蛍光剤潤滑油(Dr.Leak)を注入しましたので、ここからはしばらく時間がかかります。
写真はブラックライトで照らしてみているところです。漏れの箇所が比較的大きければ1ヶ月程度で判明しますが、極小さなものであれば数か月かかる事になります。ここからは少し様子を見る事になります。今のところ、冷房は効いてくれていますので、漏れ等の結果については、追ってご報告したいと思います。
8月9日追記
8月9日現在、外気温39.5℃の環境下で使用。 吹き出し口からの温度は12℃でした。これ位の温度で安定してくれていれば、修理は完了出来るのですが…。この暑い夏を乗り切れるか!もう少し様子を見てみたいと思います。
●夏場に冷房が効かなくなったら
先にも述べましたが、夏場にエアコンが効かなくなったら、ただ暑いというだけでは済みません。真夏の車内はビニールハウスと同じです。窓を閉め切った車内は、太陽光(熱)は通すが空気は通さないので、熱中症が起きてもおかしくない状況です。フロントガラスを通過した太陽光は、ダッシュボードやシートで温められ、気温はどんどん上昇します。熱はどんどん伝播し車内の温度は上昇し続けますが、締め切った車内は空気が外に出て行きづらい状態です。もはやカーエアコンは欠かす事の出来ない必需品です。
「エアコンを入れておいたら大丈夫だろう」と思われる方もいらっしゃいますが、アイドリング中は冷媒ガスの循環量が下がりますので、走行中に比べてエアコン機能が低下します。エアコン機能がビニールハウス効果に負けてしまう状況になりますので、決してお子様やペットを車内に残して傍を離れる事の無い様にしましょう。
さて、そのエアコンが効かなくなった時ですが、まず走行中なら窓を開けて風の通り道を作りましょう。助手席または運転席の窓を約10㎝開けて、対角側にある後部座席の窓を5㎝位開けます。風の通り道を作ると共に、「入り口は大きく、出口は小さくする」事で入ってきた風の強さが増します。
もし、渋滞等に巻き込まれた時は走行風を取り入れる事が出来ない為、無理をせず一旦日陰に避難しましょう。サンシェード等を積んでいる場合は使用してまずは車内の温度を上げない様にする事も重要です。
夏場カーエアコンが効かない状態の時、車内で出来る事は限られています。コンビニ等で氷や冷たい飲み物を買って、ドライバーや同乗者の方の体調を最優先して下さい。
カーエアコンは、夏場だけではなく、除湿や曇り取り(デフロスター機能)が必要な梅雨の時期や冬場でも活躍する優れモノです。カーエアコンの修理やお問い合わせは夏場前後に集中しますが、一年を通して使用する機能なので、日頃からしっかりメンテナンスされる事をおススメ致します。
●まとめ
今回は、お客様からお預かりした「SUZUKI ワゴンR」について、順を追って起筆致しました。なお、カーエアコンが冷えない時の一般的な原因等につきましては、別途まとめておりますので、ご活用頂けましたら幸いです。
有限会社東伸自動車 「カーエアコンが効かない!冷えない!何が起きている!?」
http://www.toushinjidousha.com/?p=1303
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