〈修理レポート〉

修理日時:2016/03/01

車種:E25 日産 キャラバン



症状:

高速道路走行中にエンジンの出力が極端に低下し、ターボが回らなくなり、スピードが出なくなる。



対応:

公道を走行するには安全上、問題のあるスピードしか出ない為、走行不能と判定し、弊社のレッカー車にて現場に急行し、お客様と当該車両を搬送させて頂きました。



診断:

弊社の工場に入庫後、コンピュータ診断したところ、DPFの前後の差圧が6まで上昇しており、排気がスムーズに出来ていないことが推測されました。

またDPFの再燃焼をした際も排気温度は104℃と非常に低く、十分にDPF内部が燃焼していないことが確認出来ました。

原因は長年使用したEGRバルブとその関連部品である触媒、DPF、エキゾーストマニホールド、インテークマニホールドなどの詰まりが考えられました。

今回のケースは推測するに、まずEGRバルブ本体と分岐経路に、長年の使用により煤の塊ができ、排気ガスの循環不良が起き、さらにその行き場をなくした排気ガスが触媒やDPFに滞留し、燃え残った煤が塊となって排気不良を起こします。

その結果、深刻な排気不良に陥り、排気ガスによって動作しているターボの過給圧不足が起き、そのエラーコードがコンピューターに入り、エンジンの保護回路が働き出力制御を行っていた為、突然スピードが出なくなったものと考えられます。

修理方法としてはまず、EGRバルブをはじめとする排気ガスの通過経路に関連する部品の分解清掃と、目詰まりを起こしたDPFの強制燃焼プログラムの実行を行います。

ここでDPFの燃焼温度の変化をモニタリングし、内部が均一に燃焼しているかどうかの確認をします。

もしこの地点でDPFの入口と出口の燃焼温度の差が大きく、改善しなければ、DPFの交換が必要となります。

また触媒やインテークマニホールド、エキゾーストマニホールド等の清掃を行い、排気ガスの循環経路を通りやすくしてゆきます。

そして、その結果をコンピューター診断機でモニタリングしながら試運転を繰り返します。

ここでもし排気ガスの通りが悪い兆候が見られた場合は、触媒の交換も必要となります。



〈用語の説明〉

DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)…ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質をフィルターで漉し取り大気開放させないようにする装置。使用頻度に応じてフィルターの目詰まりを起こさないよう、内部を高温加熱し、クリーニングする機能がついているものが多い。


EGR(排気再循環)…エンジンからの排気ガスの一部を取り出し、もう一度、エンジン内への吸気に混ぜることで、排気ガス中の窒素酸化物の濃度を下げる装置
排気ガスは酸素濃度が薄い為、このガスを吸気に混ぜると混合ガスの酸素濃度が下がる。このことにより燃焼温度が低下し、窒素酸化物の発生が抑えられる。


触媒…エンジンからの排気ガス中に含まれる炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物といった有害な成分を浄化させる装置。
排気ガスがこの装置を通過する際に還元・酸化させることで上記の有害な成分を水や二酸化炭素、窒素に変換し大気開放する。


エキゾーストマニホールド…エンジンの燃焼室内から排気されたガスの通り路。
ここを通ったガスはEGRにより再吸入される経路に分配されたり、ターボタービンを回す経路に分配されたり、又は、そのまま触媒へ送られ、DPFを通り大気開放されるものとに分けられる。


インテークマニホールド…エンジンの燃焼室内への空気の吸入口。
バルブ機構になっており、大気から吸い込んだ空気や、EGRからの再吸入ガスを混合した空気の量を調節する役割を果たしている。



修理:

まずターボの焼け具合を確認致しました。

ターボが動作しないという症状が出ていましたので、タービンの焼けが心配です。

幸い焼けやガタも無く、使用上問題ない状態でしたので一安心です。

ターボは高価な部品ですので、ここが使えるのと使えないのでは修理代が大きく変わります。

修理を決断する上で重要な箇所でしたので、ここを一番に確認させて頂きました。

いよいよ本格的に修理に取り掛かります。



エキゾーストマニホールドと触媒、DPFを分解し、内部の汚れ具合を確認しました。

予想どおり、触媒にもDPFにも大量の煤が堆積していました。

手作業で念入りに洗浄してゆきます。

この段階では触媒もDPFも、本来の性能を取り戻したかどうかは判定が付きません。

実際に組付けたときに正常に動作してくれることを祈りながら入念に洗浄を行います。


次にインテークマニホールドとEGRバルブとその周辺の部品を取り外します。


EGRクーラー(清掃前)

EGRクーラー(清掃後)

こちらは想像を絶するほどの汚れ具合でした。

やはり予想した通りEGRの詰まりが先行し、順を追って触媒、DPFと疾患が拡大したのではないかと考えられます。


EGR逆止弁(清掃前)

EGR逆止弁(清掃後)

特にEGRバルブの逆流防止弁の汚れは凄まじく、ほとんどの通過経路を塞いでしまっていました。

これでは正常に機能できません。


EGRバルブ(清掃前)

EGRバルブ(清掃後)

またインテークマニホールドのバルブ機構も凄まじい汚れ具合で、適正な吸気が行えていたのか不安になります。

構造上、煤と油分を大量に含んだ空気が絶えず通る経路なので、長年使用するとこうなるのはやむ得ない事です。


インテークマニホールド(清掃前)

インテークマニホールド(清掃後)

EGRバルブもDPF同様、組付け後、正常に動作してくれるかどうかは実際に走行してみるまで分かりません。

電装部品ですので壊さないように慎重に洗浄します。



すべての部品の洗浄が終わり、元通り組付けしてゆきます。組付け完了後、コンピューター診断機を接続しエンジンを始動します。

問題なくエンジンはかかりました。

コンピューター診断機の数値を確認します。

基本動作に異常がないことを確認した上で、DPFの強制燃焼を行います。

入庫時、100℃程度までしか上がらなかった燃焼温度が600℃付近まで上昇しました。

さらに強制燃焼完了後のDPFの前後の差圧が0に改善しました。

これはDPF本体内の排気ガスの通りが改善したことを意味します。

内部の目詰まりが解消し、煤を十分燃やしきれる状態になったものと考えられます。

洗浄によりDPFは本来の性能を取り戻したようです。



次にEGRバルブの補正が正常に動作しているかの確認を行います。

アクセルの開閉を行い、補正数値が正常に推移しているか確認します。

これも無事正常に動作していました。



後は実際に走行しながら、数値の変化を確認してゆきます。

EGRバルブの動作が確認しやすいように、変化に富んだ道を選び、EGRバルブの補正動作が正常に行われているかどうかを、コンピューター診断機でモニタリングしながら走行テストを行います。

加えてターボの動作や、排気ガスが正常に循環・排気しているかも確認しながら走ります。

結果は良好でEGRの補正も正常に行われていました。

またターボの動作や排気ガスの循環・排気も問題なく走行できました。

100㎞程度の走行テストを行いましたが、当初、懸念されたDPFや触媒の交換も必要なさそうです。

いづれの部品も高額な部品ですので、予防整備で安易に交換できるものではありません。

交換してしまえば一番良いのですが、経済的な負担を考えると、使えるものは使うに越したことはありません。

一旦、車両をご返却し、経過を見させていただくのが最善だと考えましたので、その旨をご説明させて頂きご納車いたしました。



結果:

ご納車完了後、キャラバンは調子よく走ってくれているようです。

300㎞程の出張に出られたそうですが、心配された再発もなく経過は良好でした。

今回の修理は日産に限らず、各メーカの最近のDPF装置搭載車によくみられる故障です。

昨年だけでも弊社でのDPF関連の修理は日野、いすゞ、ふそう、トヨタ、日産を中心に10台程度の症例がみられました。

いずれも10万㎞以上の走行を経た車両でしたが、この手の故障は構造上、やむ得ない故障なのかなと思います。

車両が環境対応していく上では、現状避けられないことなのかもしれません。



予防策としては、メーカー指定のエンジンオイルでこまめに3000㎞未満で交換していくことと、一定の距離に達した段階でDPFの強制燃焼を実行したり、EGRバルブや触媒廻りの分解清掃を定期的に行うことが良いのではないかと思います。