【TOYOTA ハイエース スーパーGL】DPF(DPR)ランプ点灯!!門真の整備士が原因究明に迫る!

 今回お客様からお預かりしたお車はトヨタ ハイエース スーパーGLです。商用車の代表の様なお車ですが、スーパーGLはハイエースの中でも上級グレードのお車になります。お仕事ではもちろんの事、個人またはファミリーで愛用されている方も多く、オーナーの目的に合わせてグレードもタイプもチョイスすることが出来ますので、本当に多くの人に信頼され愛されている車種と言えます。

 ハイエースのパワートレインは、ガソリンとディーゼルの両方があります。ディーゼルエンジンは皆さんよくご存じの通り、燃費がよくパワフルな走行が可能です。ただディーゼルエンジンならではのトラブルもあり、それがDPF(DPR)の詰まりなどです。

 今回はDPFランプが点灯したとの内容でしたので、お車をお預かりして拝見致しました。原因が複数考えられるかなと言う状況ですので、一つ一つ点検しながら原因を探っていきたいと思います。


●今回お預かりしたお車

メーカー・ブランドトヨタ ハイエース バン スーパーGL
型式ADF-KDH201V
エンジン
(パワートレイン)
1GD-FTV(ディーゼルエンジン)
使用燃料:軽油
年式・初年度登録2017年
走行距離156864㎞

故障の症状

 DPFランプ点灯(DPF異常) 

  DPFランプが点灯するという事は、ススなどが蓄積して詰りが発生しているなど、エンジン系・吸気系の不具合が考えられます。酷い場合は破損している事もあります。そのままにしているとエンジンに制御がかかり(今以上の破損を招かない為の制御がかかる)排ガス浄化装置が機能しなくなります。

【DPFランプ】
点滅点滅開始から約50㎞は走行可能ですが、出来るだけ早く車両を路肩に停車させて、DPFの手動再生をする必要があります。
手動再生をしなかった場合「点滅」から「点灯」に変わります。
点灯点灯に変わると、エンジンに制御がかかり(今以上の破損させない為に制御がかかる)、速度が40~50㎞/h程度しか出なくなります。この状態になると、ドライバー自身で解除する事は出来ません。整備工場やディーラーに持ち込んで、点検整備する必要があります。

 DPFチェックランプが点滅した場合は、路肩に停めて手動再生をしなければいけません。点灯した場合は、そのまま走行を続けると、エンジン出力が上がらずスピードが出なくなります。危険である事は勿論の事、そのままにしていたら機能しなくなり、取り返しのつかない故障(修理)に繋がります。

 日本の道路は走行と停止を繰り返し、エンジンの回転数が上がりきりません。エンジンの回転数が上がらない&短距離走行(ストップ&ゴーを繰り返す)で排気ガスの温度も上がらない=DPFフィルターの自動再生が出来ず、マフラーに粒子状物質(PM)が溜まりやすく、結果としてフィルターの目詰まりを起こしやすいと言う傾向にあります。

 高速道路を利用した際に、エンジンの回転数を上げて排気温度を高温にする事で、汚れ(スス)等が燃え切ってくれます。高速道路を利用される際に少し意識すると良いのではないでしょうか。他にも粒子状物質(PM)の少ないエンジンオイルを選ぶ、エンジンオイルの交換サイクルを少し早めにすると言った対策も予防になります。

 DPFランプが点灯すると、DPFそのものの故障だけではなく、他のパーツにまで悪影響が出ている可能性があります。今回お預かりしたお車も広範囲(複数箇所)で何らかの異常が発生している可能性があります。DPFの異常を放置すると取り返しのつかない故障(修理費)に繋がる恐れがありますが、普段からメンテナンス等で事前に対策を取る事でDPFを長持ちさせる事ももちろん可能です。

 DPFには以下の通り、3種類の再生方法があります。

自動再生走行中、DPF内に一定の粒子状物質(PM)が溜まると自動で燃焼を開始します。走行中にエンジンの回転数が上がり、約15~20分走行を続けることでDPF再生は完了します。
手動再生チェックランプが点灯した際、一旦車を路肩に停めます。高回転でアイドリングを行い、インジケーターランプ、DPFボタンを押して手動再生を行います。
強制再生ドライバー自身で行う事は出来ません。整備工場やディーラーに車を持ち込み実施します。
DPF内部を600℃まで上げて、粒子状物質(PM)等を燃焼させます。強制再生はDPF内部に大きな負担がかかる為、頻繁に実施するのはダメージに繋がります。

故障箇所の特定と診断

 診断機を使い強制再生を行いましたが、正常に完了せず。診断機にはエラーコード[P2002]が表示されていました。この[P2002]は少し厄介なコードなので、丁寧に見ていきたいと思います。

【エラーコード:P2002】
DPFは排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集し、自動燃焼処理する装置ですが、粒子状物質(PM)が規定量以上になって、過堆積している事を意味します。

 エラーコード[P2002]が出る場合、インジェクターの詰まり(不完全燃焼)や、スス(カーボン)が悪さをして排気シャッターバルブやEGRバルブに影響が出ているパターンが考えられます。他にもセンサーやサーモスタッド、排気システムの漏れ等も要因として考えられますので、エラーコードP2002が表示された場合、広範囲で原因を探る必要があります。

 例えば、インジェクターの詰まりが原因になっている場合ですが、ディーゼルエンジンのインジェクターは詰まり症状が起きやすい傾向にあります。詰まりの原因はカーボン(炭素)やスラッジ(燃えカス)等が固着してしまう事ですが、これらが詰まる事で正常な燃料噴射が出来ず=不完全燃焼が起きて、結果大量のススが発生する=DPFフィルターを詰まらせるという流れが出来てしまいます。

 確認してみない事には原因究明に至りませんし、DPF本体は高額ですので、単純にDPFの交換をお勧めする事は出来ません。考えられる原因について、一つ一つ探っていきます。尚、このコードが出ると強制再生も出来ないので、バッテリーから一旦切り離した上で、故障コードを消去します。その後診断機から強制再生を試みます。

 強制再生では燃焼温度を600℃前後まで上げて、DPF内部に残った粒子状物質(PM)を燃焼させます。約30分経過後様子を見ましたが、温度が上がってきませんので、これでは再生は出来ません。排気シャッターが固着してしまっている(閉じない)、排気漏れがある、インジェクターが汚れている等の原因が考えられます。

 各ポイントで点検を試みた結果、排気シャッターバルブの内部がサビサビの状態で固着してしまっていました。DPFに付いている排気シャッターバルブは、自動または手動で閉じ、DPF内の温度を上げる役目があります。そうする事で粒子状物質(PM)を焼いて、DPFの詰まりを除去してくれます。固着した状態では、水温も排気温度も上がりませんから、DPF再生は出来ません。その結果DPFチェックランプが点灯した様です。

排気シャッターを新品に交換し、DPF再生したところ、排気温度が上昇し正常に燃焼も完了しました。

●故障修理の内容と費用

作業内容・部品等工賃部品代
ダイアグモニター診断・現車確認診断・試運転・強制燃焼30,000円 
DPFシャッター交換30,000円 
部品代(エキゾースト) 105,080円
合計60,000円105,080円
消費税16,508円
総計181,588円
2024年8月現在

修理後の様子

 当初の症状に関しては改善されました。DPFランプもエラーコード[P2002]も消えましたので、一度これで様子を見ていただく事に致します。お客様には修理についてご説明の上、お車をご納車させていただきました。

まとめ

 ディーゼルエンジンから排出されるPMとNOxに対して、日本では2002年(平成14年)から規制強化等が実施されるようになりました。各自動車メーカーが対応技術に積極的に取り組み、様々な分野で自動車を取り巻く環境対策が実施された事で、自動車から排出される窒素酸化物などの排出量は着実に減少しています。大阪府でも2009年(平成21年)から、流入車規制が実施されてきましたが、規制前の数値を大きく下回った事から、2022年(令和4年)に流入車規制は廃止されました。

 非適合車ゼロ宣言(=大阪府の施策)の元、ディーゼル車に係る多くの人の努力があって今に至っている事は言うまでもありません。1・4ナンバーのトラックやバン、2ナンバーのバス(マイクロバス)、8ナンバーの特殊自動車等、様々な人たちを巻き込み、一時はかなりのインパクトがあった様に思います。

 ここで脚光を浴びたのが、「ディーゼルエンジンの排気後処理技術」です。有害排出ガス(CO=一酸化炭素、HC=炭化水素、NOx=窒素酸化物)と粒子状物質(PM)を、科学的また物理的に除去する事を目的として、排出ガスの低減対策に浄化システムが取り入れられてきました。

【排気後処理技術】
・尿素SCRシステム
・EGRシステム(排気ガス再循環装置)
・DPF(ディーゼル排気微粒子除去フィルター)システム
・NOx選択還元触媒装置
・NOx吸蔵還元触媒装置

 ディーゼル車の車種や排気レベル等に応じて、上記の排気後処理装置が組み合わされて使用されています。

 環境と言えばCO2(二酸化炭素)もよく取り上げられますが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べるとエネルギー効率が良い為(低回転・高トルク)、必要以上にエンジンを回す必要がありません。その為消費する燃料も約3割少なく、その分CO2(二酸化炭素)の排出量も少量です。元々ガソリンに比べると燃料が安い事も有り、ディーゼル車はガソリン車に比べると燃料代やCO2排出量の点ではメリットと言えます。それでも当初はPMやNOxの事ばかりが取り上げられ、ディーゼルエンジンにとっては一時肩身が狭かったなぁと感じます。

 しかし日本の技術は凄いなといつも感心させられます。マツダのSKYACTIV-Dエンジンは新燃焼技術と素晴らしい触媒技術で、NOxの後処理装置が必要ないクリーンディーゼル車を開発し、現在CX-5やアテンザなどに搭載されています。まさしく次世代を担う画期的なエンジンです。マツダのホームぺージにも「MAZDAのクリーンディーゼルは進化をやめない」と書かれています。

 ユーザーメリットも多いディーゼルエンジンですが、トラック等ではなぜクリーンディーゼルのアピールがないのかご存知ですか?それは乗用車でなければダメだからです。メカニズムはトラックも乗用車もそう変わりありません。それならトラックがクリーンディーゼルを名乗っても良さそうなものですが、名乗れない理由は「ポスト新長期規制をクリアしたディーゼル乗用車」の事をクリーンディーゼルと呼ぶからです。乗用車だけなんですねぇ~。

【クリーンディーゼル車】
自動車排出ガス対策と地球温暖化対策の両方に寄与する低公害車が求められる中、経済産業省、国土交通省、環境省、北海道庁、日本自動車工業会、石油連盟の連名「クリーンディーゼル普及推進方策」がまとめられました。

クリーンディーゼル車の他にも、ディーゼルハイブリッド重量車(DHV)、ディーゼル代替NGV重量車の普及見通しを立てると共に、日本では低迷しているクリーンディーゼル乗用車の販売も拡大されています。 クリーンディーゼル乗用車は、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車・燃料電池車と共に、次世代自動車に名前を連ねています。

 DPFはクリーンディーゼル車にももちろん搭載されていますし、より優れたDPF装置の開発が現在も進められています。いつかもっと素晴らしいDPF装置が搭載される日も来るでしょうが、まずは今現在のお車を少しでも長持ちさせる為に、DPFの点検や交換、アドブルーの補充等、ディーゼルエンジンに出来るメンテナンスをしっかりしてやる事が大切です。

 ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、車を長持ちさせて且つトラブルを防ぐには、メンテナンスが最善の策です。お車の事でトラブルやお困り事がございましたら、大小に関わらず東伸自動車までお気軽にお問い合わせ下さい。

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